ずっと横山光輝氏の描く馬を見てきたので白土三平馬はまた独特。
ネタバレしますのでご注意を。
第十三話 天人 /第十四話 移し身
この二話は続けて書こう。
カムイの乱心法獣遁の術によって馬ごと崖から落ちた天人だったが、手下たちは脈を診て介抱した。
天人は奇跡的に起き上がりカムイとコノマの行方を問いただす。
カムイが下忍コノマを抜けさせるために天人を殺して彼に化けコノマは死体に化けた後カムイに化けて追っ手から逃れようとする。(ややこしや)
がここでかつてのカムイのように疑心暗鬼となって無為な殺人を繰り返してしまう。
天人に化けたカムイはカムイ自身に化けたコノマの顔に鬼相が現れてるのを見た。
カムイの姿をしたコノマと天人の姿をしたカムイが一騎打ちをし変異抜刀霞斬りをするふりをしてコノマを逃がそうとするがなぜかコノマには刀が刺さっていた。死の間際コノマは「兄き、あんたはもう安全だ。カムイはもう死んだのだ」と言い残す。
コノマは自分の身体を爆破させ死んだ。
が、気配を感じて天人が手裏剣を投げた相手はなんと天人にそっくりの弟だった。
天人弟は「久しぶりに天人の術見せてもらおうかい」と言い技をかけ始める。
火薬がはじけ煙幕がたちこめた。
恐ろしい天人の術に翻弄されるカムイ。
だがスキを突いてカムイはここでも平地での飯綱落としを見せた。
天人の手下たちはこれを見守っていた。
天人自身と思って見守っていたのがカムイと知り驚く。カムイは言う。
「おいらは抜け忍。死ぬわけにはゆかぬ」
そして手下たちに同じように抜け忍になるか、おいらと戦うかと訊ねる。
手下たちは「ではおいらも抜けるか。仲間にしてくれ」と言い出した。「言葉だけでは駄目だ」と答えるカムイ。
孤独なカムイに初めて仲間ができるわけだがもちろんこれが心休まる仲間ではない。
第十五話 老忍
今までになくめちゃくちゃ楽しい一作。やはり仲間(的な)者がいると楽しくなるね。
「若い者なんぞには負けん」という名張りの半助という老忍は執拗にカムイの命を狙うが(仲間とは言わないかこれ)軽くあしらわれてしまう。
女の子を使ってカムイを小舟に乗せ爆破してしまおうと画策するもやはりあっけなくやり返されてしまう。大笑いするカムイが見られる。
金をもらってカムイをだまそうとするのに「怖い」と甘える女の子がかわいい。
半助は仲間のところへ戻ってここでも爆笑される。
心温まる一作だ。
第十六話 抜け忍
こうして天人の手下だった者たちはようやく抜ける決心をする。
その一人・万(よろず)は国元に親兄弟がいた。抜ければ見せしめに殺される。万は自爆して皆の邪魔にならぬよう死んだ。
その様子を見た忍者たちは「おぬしの死をむだにはせんぞ」と誓い合う。
カムイもまたそれを見届け「追手はおいらがひきうけよう。あとはおぬしら次第だ」と告げる。
皆は「力を会わせることじゃ。仲間を信じよう」と言いあった。
カムイはまず自分の飯綱落としを見せる。他人には初めて見せたのだ。
抜け忍たちは次々と己の必殺技を見せていく。
この時に軽々とその技を受けるカムイがかっこいい。特にここ
勝てん。
半助も負けじと技を披露しようとするが皆からやめておけと言われカムイも「おまえのことは信じてるよ」と笑う。
皆が自分の技を見せあい普通の人々の中に混じり何かあれば集まって力を合わせようという算段となった。
しかし仲間の一人ホデリが殺されたことで一気に事態は変わる。
カムイは「仲間を信じることだ。迷いは地獄への坂道」と告げる。
半助は怖くてたまらずカムイにすがる。
そこにまた合図が。
今度はテブリが殺されていた。
カムイは半助にのろしをあげさせた。
集まった抜け忍たちは次々と殺し合う。カムイもまた半助を殺した。
そこでカムイに気砲を向けたのが殺されたはずのソトモだった。
嘲笑うソトモにカムイは
そこには殺し合ったはずの抜け忍たちが並んでいた。すべてがカムイの仕掛けた芝居だったのだ。
抜け忍たちは皆でソトモを攻撃し殺した。
「バカ、バカタレ、きさまのようなやつが」半助の嘆きが悲しい。
第十七話 黒鍬
再び独りとなったカムイの旅が続く。
チンピラに絡まれる娘を救ったことでカムイは土木工事請負をしている「黒鍬の五兵衛」に見込まれそこで働くこととなる。
しかしそこの領主は農繁期に百姓を土木作業させ百姓たちが反抗しないように捕らえたチンピラたちを目の前で殺すことで抑えようとした。
見ていたカムイはそれら武士たちを倒していく。生き残ったチンピラはカムイをアニキと呼んでついて行こうとするが黒鍬の五兵衛がこれを止めた。カムイはさらに追手と戦い勝たねばならなかった。
「あのように生きるか」
五兵衛はチンピラに「仲間になれ」と呼びかけた。
が、カムイは抜け忍としての果てしないさすらいが続く。
これだけの話をこの短編にまとめてしまう。恐ろしい。
第十八話 追跡
忍犬登場。
あまりの可愛さに悶え死ぬ。
旅するカムイをずっと追跡する者がいる。カムイは様々な方法でまこうとするが何をやっても通用しない。やがてそれが犬だと気づく。人と犬の区別もつかぬとは。
「カムイともあろうものが」と自責する。
焼いた魚を投げるとうまそうに食べる。「ということは野犬ではない」
追い払っても後をつけて来る犬。カムイは二里も全力で走ったが犬はあっけなくカムイの側にいた。
熊と戦いそれでも飄然としている犬にカムイは「忍犬だな」とと気づく。
しかし五日経ち忍犬の気配がなくなりふと寂しさを覚える。
すると目の前に手裏剣を受けて死んでいる犬たちがいた。
「これはいったい」
訝しむカムイの眼前で戦う二頭の忍犬。勝った忍犬はカムイの後をつけてきた犬だった。
カムイに近寄り倒れる。
カムイは「そうかおまえも抜け忍(犬)だったのか」とつぶやく。
抜け忍犬があまりにもかわいくて。
(まあこれが『バビル2世』のロデムといっとるわけです)
第十九話 りんどう
アニメ版でももっとも心に残る一作ではなかろうか。
ハードボイルド作品としても一級である。
抜け忍犬は恐ろしい生命力で長らえた。
カムイもおたがい抜け忍同士だ、と手厚く介抱する。
やがて元気になった犬に「あか」と名付けてカムイは親友のようにじゃれ合う。
「これでお前と話せたらな」
飯の支度だというと犬は川に飛び込み魚を獲ってカムイに渡した。
さらに火を焚こうとするカムイより先に火を作ってきたのを見てカムイは驚く。
さらにあかはウサギを捕まえようとしたがそこに蛇がいた。
カムイはあかを守るために飛び上がって蛇を殺したが着地場所にもう一匹の蛇がいたことですばやく身を投げた。
折あしくカムイが避けた場所が流沙だったのだ。
すばやくカムイは綱を枝に投げたが枝は折れてしまう。
その様子を見つめていたあかにカムイは「綱だ、あか」と声をかけるがあかは違う方向へ走ってしまった。
「やはり通じないか」
流沙に飲み込まれていくカムイは側に咲いたリンドウの花を見た。
「美しい。これがこの世で見る最後のもの」
カムイは流沙に沈んでいった。
あかはどうしたのか。
あかは咄嗟にカムイに近づく危険を判断していたのだ。
流沙が恐れるものではないことを感じたのだろう。
あかはカムイの追手が近づく方を危険と感じた。
まずは野犬のボスと戦って勝ち野犬の群れを操る。
カムイを追ってきた忍者たちをこの野犬の群れに交じりながら殺しウサギの血で誘い込みさらに馬を呼びこんで全滅した。
そしてカムイのもとに戻ったのだ。
流沙にのまれそうになったカムイは足がつくのを感じ歩いて淵へ進み這い上がった。目の前に先ほどの美しいリンドウがあった。
そこにウサギを咥えたあかが戻ってきた。
クウンと鳴くあか。
「まさかおまえ知ってたんじゃないだろうな」
あかはぺろぺろとカムイの顔をなめた。
甘えるあか。
「フフフ所詮人と犬の仲だ。これ以上は無理だな」
さあこい飯にしよう、とウサギを持って歩き出すカムイ。
振り返って美しいリンドウを見る。
あかはそのリンドウを踏みつけてカムイの後を追った。
もう~~~人間のほうがよっぽどダメダメじゃないか。あかがどんな苦労をしたかまったくわかっていないカムイ。
うーむもしかしたらどの飼い犬さんもこんな苦労をしているのかも。
飼い主だけがまったく気付いていないという。
でもあかはカムイの側にいるだけで嬉しそうで。
せめてカムイが怒ったりせずあきれているだけ、というのが救いなのだ。
楽しそう~。あかが特にうれしそうでほっこりする。